トレンド

スーパーゼネコンのDX事例まとめ

ゼネコン各社が取組むDXを知りたい
企業によってDXは違うの?
DXで建設業界はどうなるか不安

こういった疑問に答えます。

  

✔ 本記事の内容

  1. ゼネコン各社のDXへの取組みをまとめました
  2. 企業毎のDXの特色
  3. DXで建設業界はどう変わっていくのか

この記事を書いている僕は、大学で電気情報学科を卒業し、ゼネコンに入社。設備技術員として設計・積算・工事と経験してきました。10年間、「この業務はITを使い業務変革すれば楽になる」そんなことを考えながら働いてきましたので、今、スーパーゼネコンが取り組んでいるDXの内容もインターネットにある僅かな情報からでもある程度、推察する事ができます。そんな私が、建設業界のDXについて解説します。

  

1.ゼネコン各社のDXへの取組みをまとめました

建設業界では、現在DXにとても力を入れています。特にスーパーゼネコンでは年間500億円以上もDXに投資している企業もあり、DXを制すれば業界が変わるとすら考えられています。しかしスーパーゼネコンの取り組むDXには様々な事例がありますが、単発で実用化したというニュースはあっても、企業各社のDX全体の進捗状況が中々見えてきません。そこで企業毎にどの程度DXが進んでいるかDX事例をまとめました。

 

竹中工務店

■竹中新生産性システム

竹中工務店は、ビジネスを成長させるために「竹中生産性向上システム」を導入します。このシステムは、施工過程での生産性向上とプロセス改革を通じて、BIMや先端デジタル技術の活用により、作業効率を最大化することを目的としています。このシステムは、2020年の着工プロジェクトから順次展開され、2025年までに実現される予定です。

■「StreamBIM」

竹中工務店は、「StreamBIM」を採用しています。これはBIMクラウドプラットフォームであり、BIMモデルを中心とした書類管理とワークフロー管理が可能です。このプラットフォームは、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々なデバイスでBIMモデルを見ることができるとともに、2D図面を含めた情報のドキュメント管理も可能です。この「StreamBIM」を活用することで、設計・施工段階から維持・管理段階までの関係者のコミュニケーションを円滑化し、全体の可視性を向上させます。竹中工務店では、現在50以上の建設現場でこのシステムを採用しています。

■DXのサイバーセキュリティの強化

DX推進に伴い、多くの機器がデジタル環境に接続されるようになるため、竹中工務店ではサイバーセキュリティを強化することが重要だと考えています。

■ドローンとAIを活用した高層建物の外壁調査「スマートタイルセイバー」

「スマートタイルセイバー」は、ドローンと人工知能(AI)を活用した高層建物の外壁調査によって実用化されました。この調査により、コストを削減した上で、高精度な調査が行えます。また、ファシリティマネジメントにもロボットを活用することが進んでいます。

■データ分析プロセスを自動化

竹中工務店では、データ分析のプロセスを自動化することで、300年分のデータを建築物の設計や提案に活用することができます。データ連携基盤を導入し、設計図の作図補助や自動設計に大きな貢献が期待されます。

■建築現場の生産プロセス最適化

建築現場では、人、モノ、空間のデータをデジタルで収集することで、プロセス管理がより効率的になります。ドコモの5G・IoTを活用することで、遠隔から作業進捗を確認し、作業指示やプロセスもデジタル上で行えます。

■構造設計システム「BRAIN(ブレイン)」構造設計を70%効率化

竹中工務店は2001年に自社開発した「BRAIN」という構造設計システムをAIシステムのプロトタイプとして開発しています。HEROZのAIプラットフォームと、竹中工務店の多数の設計データを活用して、構造設計のルーチン作業の70%の効率化を目指しています。2020年までにこのプロトタイプを構造設計者が育成し、実務上で利用できる自動設計やシミュレーションの自動化を確立することを目標としています

■「EQ House」

このテクノロジーは、建物や車などと通信を取ることができるようになります。この技術により、建物を仲介役としてデジタル上でアクセスすることができるようになります。これにより、ビジネスチャンスが生まれます。

✔ 竹中工務店のDX状況評価

3DCADとの連携。現場のロボティクス化。自動設計システムとバランスよくDXが進んでいる様に感じます。企業方針も2025年のめざす姿と、しっかりと目標を定めて行動しているのも好感が持てます。竹中工務店のDXは順調と言えるでしょう。

 

鹿島建設

■「デジタル推進室」設置

鹿島建設はデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するため、2021年1月1日にデジタル推進部門を設立しました。デジタル推進部門ではITや研究機関と連携し、効率化と現場でのデジタル上のコミュニケーションの確立を目指します。専門家によって構成されており、建築、土木、開発事業などの各分野をカバーしています。情報を集約・統一することにより、DXの推進を図ります。

■ A4CSEL

A4CSELは、制御室から複数の建設マシンに作業指示を出し、自動化された建設マシンが無人で自律的に運行することができます。作業者の高齢化や不足の問題を解決し、生産性・安全性の向上を実現する施工システムです。

■3D K-Field

現場内の空間の情報をビーコンを使って取得し、BIMモデルを使った3Dマッピングを行い、施工管理を効率化することができます。現場の見える化によって、資材の空間の確認などによって無駄を省くことができます。

■内装・建具工事進捗管理システム

内装工事進捗管理システムは、作業者がスマートフォンから「部屋番号」と「完了工程名」を入力することにより、進捗状況をリアルタイムで把握できます。これにより、元請け企業や協力会社もスマートフォンなどのモバイルデバイスから進捗状況を確認することができます。

■「Microsoft Power Platform」

現場の進捗状況をデジタル上で管理することができます。

■クラウド型の人材管理システム「Oracle HCM Cloud」

「Oracle Talent Management」を導入することで、人材のタレントマネジメント、育成計画、配置計画の最適化が可能です。

■「NEWコテキング」でコンクリート打ちの仕上げ作業を自動化

タブレットから作業設定をすることで、コンクリート打ちの仕上げ作業を自動化できます。現在、AIによる制御機能の開発も進行中です。

■「鹿島ミラードコンストラクション」デジタル上で部材ごとの施工進捗率も把握可能

「鹿島ミラードコンストラクション(Kajima Mirrored Construction、以下KMC)」が構築されました。KMCは、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場で取得する空間データを組み合わせて、工事の進捗状況を把握することが可能な二次データを生成します。この方法により、工事の進捗状況をリアルタイムで確認できるようになり、収益性が向上することが期待されます。

■「現場」で役立つクラウドカメラサービス

このサービスは、カメラやセンサーを組み合わせて遠隔で現場管理ができるものです。2024年度には、このサービスを利用することで管理の50%を遠隔管理にすることを目指しています。このサービスの普及により、管理の作業効率が向上し、収益性も期待されます。

✔ 鹿島建設のDX状況評価

鹿島建設は、ロボットに力を入れていて特徴的な自動ロボットが開発されてきている様に感じます。また、3D K-Fieldや鹿島ミラードコンストラクションなど現場をうまくデジタル情報として管理出来ています。ITセンスが高く、正しくDXを推進できている企業と言えるでしょう。

  

大林組

■情報活用強化、意思決定の迅速化へのチャレンジにBoardを導入

Boardは現在のシステムと統合され、実績データを可視化することで課題や傾向を見つけ、組織階層の上下の両方から見た将来の営業計画や財務計画を立案することができます。これにより、実績と予測数字を組み合わせたフォーキャストを実現することができます。

■データ仮想化ソリューション「Denodo」によるデータプラットフォームを構築

社内のデータを統合して効率的に活用するための基盤を構築することで、社内情報の効率化を実現しています。

■ドローンによる地形データの作成、進捗状況の確認

ドローンを使用して実地の測量や障害物を把握することができます。ドローンの空撮により、設計図データと実際の状況との差異を把握し、建築作業に活用することができます。また、建設の進捗状況も把握することができます。

■IT Service Management

AIを使用して問い合わせメールを自動判別し、問い合わせ先を自動分類することで、システムのトラブルや操作方法などのサポート要求に応えるサポートデスク業務を効率化しています。

■ブロックチェーン上に記録するコンクリート受入検査システム

ブロックチェーン技術を採用することで、コンクリート受入検査システムの測定値や写真などのデータが改ざんされないようにしています。

■複数社間の支払い業務の省力化・自動化に向けたCordaの取り組み

ブロックチェーンを使用して取引情報を保証することで、契約から請求までの作業を簡略化することができます。この技術は主に仮設資材のリース取引に使用されています。

■リスト型ウェアラブルセンサを使用した作業員向け安全管理システム「Envital」

「Envital」はリストバンド型センサを使って、心拍データとWBGT計のデータを収集し、作業員の位置情報や健康状態を確認できます。3種類のビーコン信号を連続発信することにより、安全な作業環境を保つことができます。

■次世代型の自動品質検査システム

施工管理者は図面を持ち歩く必要がなくなり、見ている部位のBIMモデルと現実の鉄筋とを重ね合わせたMR映像を確認するだけで、今の状況が正しいかをすぐに判断できます。これにより、効率的な施工管理が実現します。

■大林組のチャットを使った報連相、directを導入

「direct」は写真を撮ってすぐに送信でき、相手への指示も場で出せるチャットツールです。使いやすく、年配の人でも直感的に使用できます。ビジネスにおいても安心して使用できます。情報共有がスムーズになり、作業効率が向上することで収益化が期待できます。

■「holonica」MR施工管理アプリの開発

このアプリは、複合現実技術を活用して、施工場所の実際の視界にBIMデータを重ね合わせて表示することで、施工管理タスクを効率的に行えるようにするものです。特に、設計情報の確認や検査記録の作成が簡単になります。

■Smart BIM Connection

Smart BIM Connectionは、BIMモデルに基づく部材の確定度を入力し、自動的に仕様情報をチェックすることで、BIMモデリングと確定度(プロジェクトレベルから製作レベルまで)を一元化するシステムです。

■SmartHAK

SmartHAKは、建築設計において安全な施設を実現するための設計システムです。このシステムは、避難安全検証法とBIMモデルを統合し、データを一元的に利用することができます。申請された建築確認から、性能評価検査機関による審査、国土交通省の認定までの設計法を着工前および着工後のプロジェクトで実証しています。

✔ 大林組のDX状況評価

大林組はブロックチェーンを利用した技術で、施主や協力会社との業務効率化ができています。また、作業員の安全を考慮した技術なども開発されていて、自社だけでなく関わる人全体を見据えた業務改革が出来てきています。またMR技術も順調に開発されてきていて順調と言えるでしょう。

  

清水建設

■建物運用の支援する建物OS「DX-Core」

DX-Coreは、建物内の建築設備やIoTデバイス、各種アプリケーションを簡単に連携させることができる建物運用のデジタル化プラットフォームソフトウェアです。これは、ロボットや先進的な建物サービスと統合するための基本ソフトウェアとなります。

■ALSOKの警備ロボと清水建設の建物OSが連携、「REBORG-Z(リボーグ・ゼット)」を開発

「REBORG-Z」は、警備ロボットと「DX-Core」を連携させることで、エレベーターや自動ドアなどとも連携できます。これにより、階層の移動やロボットによる入退出管理などが可能になります。

■RPAロボで間接業務15%自動化計画

業務プロセスをソフトウェアで自動化することで収益を上げます。21年度中には、繰り返し行われる単純作業やデータ作成・集計作業などの間接業務の15%を自動化することが計画されています。

■3Dプリンティングを活用した型枠の実現

大規模なデッキのコンクリート柱を支えるために、4本の柱部材を3Dプリンティング施工することで、従来工法では困難だった高さ4.2メートルの自由曲面形状を構築することができました。

■BIMデータ上で建築確認の事前協議実施

総合病院の建築に関する実案件において、業界初となる事前協議でBIMデータと法適合判定プログラムを活用しました。その結果、BCJからの確認済証交付を受け取ることができました。

✔ 清水建設のDX状況評価

清水建設は、ロボットと建物内デバイスの連携などの保守管理のDXに注力しています。またBIMデータで建築確認済証交付を実現するなど実務面でBIMを利用できていると思います。しかし他のスーパーゼネコンに比べ、BIM連携のDXが遅れていると感じます。また現場関するDXはまだ進んでいない様です。

  

大成建設

■構築された「T-BasisX」:Wi-Fi環境と従業員の作業状況を一体化するDX標準基盤

現場内での全てのインターネット環境をカバーするWi-Fiと従業員の作業状況を把握するシステムを統合し、建築現場でのDX標準基盤となる「T-BasisX」を構築しました。このT-BasisXにより、着工から竣工までの現場での様々なデータを収集・分析することが可能になります。

■「T-iCraft」:協調運転制御システム

この「T-iCraft」は、様々なタイプの自動建機を協調的に制御することが可能であり、全地球測位衛星システム(GNSS)と自動運転プログラムを搭載しています。このシステムは位置情報と進捗を監視しながら自動運転を実行することができます。他社の建機にも使用可能であり、協調制御のプラットフォームとして確立されています。

■「LifeCycle(ライフサイクル)OS」:竣工後に蓄積するデータを管理する統合システム

竣工後に蓄積するデータを統合管理するために「ライフサイクルOS」を開発します。このシステムは「サービス用BIM」と外部データを連携させ、最適な情報を提供することができます。「サービス用BIM」は自治体情報や気象、交通情報などのデータやアプリとも連携可能です。デジタルツインを活用することで、リアルタイムに顧客が望む管理・運用情報を提供することができます。

✔ 大成建設のDX状況評価

大成建設は、現場のDXの基盤までできています。またロボットの自動運転の開発は順調のようです。BIMデータの活用もできていて特に保守管理用にデータ基盤を確立してきています。

 

2.スーパーゼネコン別、DXの特色まとめ

企業竹中工務店鹿島建設大林組清水建設大成建設
社内
設計補助×××
ロボティクス
現場管理×
保守管理×
スーパーゼネコンのDX比較表

スーパーゼネコンの取り組むDXの情報から企業別にDXの進捗を表にまとめました。こうしてみると、スーパーゼネコン毎にDXに力を入れている部分が違い、特色がそれぞれでてきています。竹中工務店では設計補助、鹿島建設は現場管理、大林組は設計と現場、清水建設はロボ、大成建設は保守という様に、それぞれ力をいれています。また、大林組のDXは保守管理以外はバランス良くDXが進んでいる事がわかります。対照的で清水建設はややバランスが偏っている様に見えます。この表は、あくまでインターネットからの情報から推測して作成していますので、実際の企業のDXの進捗と異なります。

 

3.DXで建設業界はどう変わっていくのか

建設業界の課題は、人材不足と生産性の低さです。この課題を解決するために業界が変貌し始めてきています。ロボットやITを活かした業務改革による自動化や生産性の向上を主に今後も業界は変わっていくでしょう。現状のDXから今後の業界の働き方を推測してみると、まずはタブレットやスマホというツールは必須になってくると思います。さらにBIMの正しい活用方法や3DCADで打ち合わせが当たり前になります。会議も現場内のカメラを通じて行う様になると思います。現場ではロボットが普及し工程はタブレットで管理となってくるはずです。この様に、IT端末を利用した働き方に大きくシフトチェンジしてくると思います。当然、多くの残業もスーパーゼネコンを中心に大きく減り、2025年にこれらの事が当たり前となってくると考えています。今後はスーパーゼネコンがより多くの利益を出し、中小ゼネコンの立場は苦しくなってくると考えられます。世の中の変化が激しい現代において、転職や情報収集の為に転職エージェントを利用する事が当たり前になってきています。エージェントとまずは無料面談で自分の市場価値や情報収集をするために利用するのも手だと思います。私はそこから初めてじっくり情報収集をして半年かけて転職をしました。いくつか登録していましたが、特に良かった転職エージェントを載せておきます。ここは特に優良企業を厳選して紹介してくれるので自分の市場価値がわかりやすいです。

 

 

いかがだったでしょうか。ゼネコン各社のDX状況をまとめてみました。DXの進捗状況が見えてくると思います。スーパーゼネコンでは働き方が大きく変わってくる過渡期だというのが感じられたと思います。DXという大きな波が来ていますが、時代の流れに頑張ってついて行きましょう。

-トレンド

© 2024 建設DX