はじめに
施工管理の現場で10年間、ずっと悩んでいたことがある。
「なんで会議のたびに、こんなに時間を取られるんだろう」
打合せが終わった後、A4用紙に走り書きしたメモを整理する。Excelに打ち込む。関係者にメールで送る。次の打合せのために前回の議事録を引っ張り出す——。
それを毎週、何十回と繰り返してきた。
施工検討会議、工程会議、安全衛生会議、下請けサブコンとの調整会議……。現場の職種柄、1日に3〜4回の打合せがあることも珍しくない。
「これ、AIでなんとかならないか」
そう思い始めたのは2年前。ChatGPTが話題になり始めた頃だった。
SaaS営業に転職して、もう一つの気づきがあった
設備現場を離れてSaaS企業の営業職に転職した。ここで3年間、法人向けソフトウェアの売り方を学んだ。
毎日の商談記録、顧客との打合せメモ、週次の進捗確認——業種は違っても、「会議の記録に時間を取られる」という問題は全く同じだった。
そして、もう一つ気づいたことがある。
SaaS営業ツールは「高機能すぎる」のだ。amptalkやOtterのような製品は、Salesforceや社内システムと連携して、営業データを分析して、フォローアップを自動化して……。月1万円を超えるものも珍しくない。
「そこまで要らないんだよな」と思っていた。
現場の打合せ記録は、現場の中で使う。SFAに飛ばして分析する必要はない。「録音してAIが議事録を作ってくれれば、それだけでいい」という人が、建設業にも営業現場にも、山のようにいるはずだ。
既存ツールでは解決できなかった
「AI議事録ツールはすでにいくつかあるじゃないか」と思うかもしれない。
試した。本当にいろいろ試した。
でも、どれも対面の現場打合せには使えないことがわかった。
ほとんどのツールはZoomやTeamsの録音を前提としている。現場の打合せは違う。工事現場の一角、仮設事務所の小さなテーブル、時には屋外の施工ヤードでやることもある。
スマホ1台で、バックグラウンドで録音し続けて、終わったらAIが議事録を作ってくれる——そういうツールが、意外にも見つからなかった。
料金も高かった。月1,000〜2,500円が当たり前。建設業の現場監督が個人の判断で契約するには、踏み切りにくい価格帯だ。
ならば作るしかない。
開発開始〜リリースまで
Flutter、Firebase、Python——エンジニアとしての経験は少しあったが、スマホアプリの開発はほぼ初めてだった。
最初の3ヶ月は「動くもの」を作ることに集中した。
音声を録音してWhisper AIに投げる。帰ってきたテキストをGemini AIに渡して議事録を生成する。それだけのパイプラインを作るだけで、当初は予想外のことが次々と起きた。
- バックグラウンド録音がAndroidに強制終了される問題
- 長時間録音中にアプリがクラッシュしてデータが消える問題
- 建設用語(「サブコン」「納まり」「施工図」「躯体」「フカシ」)が文字起こしで誤変換される問題
一つひとつ潰していくのに時間がかかったが、それが現場を知っているからこそ見えた問題だと実感した。
自分が現場を知っているから、「これは絶対に解決しなければならない」と判断できた。SaaS営業の経験があるから、「ユーザーが本当に払える価格」と「必要な機能の絞り方」もわかっていた。
VoiLogができること
完成したアプリ「VoiLog(ボイログ)」の主な機能はこうだ。
① バックグラウンド録音 + 自動バックアップ
スマホ画面を消しても、他のアプリを使っていても録音を継続する。30秒ごとに自動バックアップするので、クラッシュしてもデータは守られる。
② ロック画面・通知から録音を操作できる
録音中はステータスバーに経過時間と音量レベルが常時表示される。ロック画面からも一時停止・再開・停止が操作できるので、スマホを取り出して画面を開く必要がない。両手が使えない現場で、これは思った以上に便利だった。
③ AI文字起こし
Whisper AIが日本語を認識。建設・設備工事の専門用語辞書を独自に組み込んでいるため、「サブコン」「施工検討会議」「納まり図」なども正確に認識できる。
④ AI議事録の自動生成
文字起こし結果をGemini AIが解析し、タイトル・要約・決定事項・アクションアイテムを自動で抽出した議事録を生成する。読みやすい構造に整形されているので、そのまま送付できる。
⑤ 業種別テンプレート
「施工検討会議」「安全衛生会議」「商談記録」など、業種・用途に合わせたテンプレートを選択できる。テンプレートによって議事録の構成や重点項目が変わる。
⑥ Q&A機能
生成された議事録に対してチャット形式で質問できる。「誰が何を担当することになったか?」「次回の打合せはいつか?」——議事録を読み返さずに確認できる。
「議事録の先」には行かない
最後に、一つ正直に書いておきたいことがある。
AI議事録サービスの中には、「次はCRM連携、商談分析、フォローアップ自動化」と進化している製品も多い。それはそれで素晴らしいと思う。
でも、VoiLogはその道に行かない。
理由は単純だ。それをやると、月980円では回らなくなるからだ。
現場の議事録は、現場の中で使う。Salesforceに飛ばして分析する必要はない。「録音してAIが議事録を作ってくれれば、それだけでいい」という人のために、月480円から使える価格を維持したい。そのために「議事録だけに全振り」する選択をした。
「機能が足りない」と感じる人もいるかもしれない。でも、その人が求めているものは最初からVoiLogの対象外だ。そこは割り切っている。
料金と始め方
完全無料プラン(¥0)
月2時間まで無料。クレジットカード不要。Googleアカウントでログインするだけで使える。
ライトプラン(月額¥480)
オフラインでの議事録作成が無制限。電波がない現場でも使えるのがVoiLog最大の強みで、ここがその入口になる。
スタンダードプラン(月額¥980)
オフライン無制限 + オンラインAI機能フル(懸案抽出・Q&A・資料連携等)。競合の半額以下で同等機能を使える。
これから
現時点ではAndroid版のみの提供だ。iOS版は2026年末頃に判断する予定。
次のフェーズでは、オンデバイスWhisper(デバイス内での文字起こし処理)への移行を計画している。これが完成すると、電波ゼロの環境でも文字起こしからAI議事録生成まで全てが端末内で完結する。クラウドに音声を送らないので、機密性の高い会議でも安心して使える。
建設業向けの専門用語辞書も、現場の方々のフィードバックを受けながら拡充していく予定だ。
フィードバックや不具合報告は大歓迎だ。作った本人が直接読んで、直す。
設備現場10年とSaaS営業3年の経験を持つ開発者が作ったアプリが、同じ現場の誰かの「1時間」を取り戻せたら、それだけで作った価値がある。
そういう気持ちで作りました。よかったら使ってみてください。
VoiLog — AI議事録メーカー
ご意見・ご要望: support@voilog.app