議事録AI「VoiLog」を個人開発していて、ある夜3時間44分(224分)の会議録音データが丸ごと消えました。テストデータだったので笑い話で済みましたが、これがユーザーの本番の打ち合わせだったらと考えると、本当に背筋が凍りました。今回は、Androidのバックグラウンド制限という壁にぶつかって、開発の優先順位を組み替えた話を書きます。
建設業の現場管理10年、SaaS営業3年から個人開発に飛び込んだ人間の、リアルな躓きの記録です。同じように録音系・音声系のアプリを作っている方や、長時間処理を扱う個人開発者の参考になればと思います。

67分の録音テストが3回連続で死んだ夜
最初に異変に気づいたのは、67分の録音テストでした。会議は60分前後で終わることが多いので、現実的な検証として「1時間ちょっとの録音が安定して取れるか」をテストしていました。1回目、途中で止まっていた。録音ファイルを開くと、最後の10数分が記録されていない。バグかと思って2回目を回しました。2回目もまた止まる。3回目も。
原因を調べる過程でClaudeに状況を投げたら、即答で「Androidのバックグラウンド処理は10分前後で強制終了されることがある」と返ってきました。WorkManagerの仕様、Doze mode、メーカー独自の電池最適化——いろいろな層の制約が重なって、結局「画面を消した状態で長時間処理を維持する」のは、想像よりはるかに難しい世界でした。
自分の頭の中では「会議は1時間あるのが普通」だったのに、システム側の暗黙の想定は「10分で十分」でした。この10分の壁がどれだけ厚かったか、当時は本当に分かっていませんでした。
224分、3時間44分の録音が消えた日
決定打になったのは、農協の会議録音のテストでした。224分、3時間44分。実際の自治体・農協系の会議はこれくらい平気で続きます。これをVoiLogで録音したら、途中で同じ問題で落ちて、録音データが残っていませんでした。
67分のテストが死んだときは、まだ「テストだしね」と思えていました。でも224分のデータが消えたときの感情はまったく違いました。これがもし建設現場の朝礼でも、商談の打ち合わせでも、ユーザーが録っていた大事な録音だったらと考えた瞬間、本当に背筋が凍りました。

議事録AIで「文字起こしの精度」を上げるとか「要約をきれいに出す」とか、それまで色々考えていました。でも、そもそも録音データが残っていないと、全部の機能が意味を失います。土台が崩れた状態で、その上の機能をいくら磨いても無駄です。この日から優先順位がはっきりしました。
「録音だけは絶対に失敗させない」という設計原則
そこで、開発の方針を一本に絞りました。「録音だけは絶対に失敗させない」。これを設計上の最優先事項にしました。具体的に何が変わったか、3つあります。
1つ目は、Foreground Serviceでの常時実行に切り替えたこと。WorkManagerのバックグラウンド処理に任せていた部分を、明示的な「通知バーに出続けるサービス」として再設計しました。電池消費は増えますが、その代わりにOSが勝手に殺しに来ない構造になります。録音中は通知バーに「録音中」と出続ける、ある意味うるさい設計です。でもユーザーから見ても「今録音中だ」が分かる方が安心です。
2つ目は、メーカーごとの電池最適化対策。Samsung、Xiaomi、OPPOなど、メーカーごとに独自の節電仕組みが乗っていて、これがアプリを勝手に止めます。各機種で「電池最適化の対象から外してください」とユーザーに案内するフローを入れました。個人開発で何台もの実機テストを揃えるのは大変ですが、ここを諦めるとユーザーの録音が消えます。
3つ目は、録音ファイルの分割保存。長時間録音を1ファイルで持つのではなく、一定時間ごとに区切って書き出します。万が一途中で落ちても、それまでに録れた分は救出できる構造です。VoiLogの料金プランと機能のページにも書いていますが、この「録音の冗長化」は地味ですが、ユーザーにとっては一番効く部分だと思っています。
個人開発者にとっての「優先順位を組み替える勇気」
個人開発をしていると、つい「派手で新しい機能」に手を出したくなります。AI議事録なら、要約を磨くとか、Q&Aモードを増やすとか、見栄えするものは山ほどあります。私もそっちに引っ張られかけていました。
でも224分のデータが消えた日に学んだのは、土台の信頼性こそが、機能の前にあるということでした。録音が確実に残らない議事録AIは、どれだけ要約がきれいでも意味がありません。「派手な機能を1個減らして、地味な録音基盤を1段強くする」——個人開発でこれを選ぶのは正直怖いです。SNSで映えるネタは派手な機能の側にあるからです。
それでもこの優先順位は組み替えてよかった、と今は思います。ユーザーが「録音したのに消えてた」と1回でも体験したら、二度と使ってもらえない。逆に「ちゃんと残ってる」が3ヶ月続けば、それが信用になります。1人開発のVoiLogが目指しているのは、機能数の競争ではなく、この信用の積み上げです。
議事録AI「VoiLog」は、「録音だけは絶対に失敗させない」を最優先に設計した個人開発アプリです。録音するだけで、決定事項・宿題・持ち越しがブロックになって返ってきます。月480円でオフライン議事録が無制限、月980円でAI機能フル開放(懸案抽出・Q&A・資料連携)。クレジット枯渇なし、月の上限なし。建設業10年からの個人開発者が、現場と商談の動線に合わせて作っています。
アプリのダウンロードは VoiLog公式サイト からどうぞ。開発の裏側は note と X(@pckantanwork) で毎日発信しています。